
活用事例|Affectiva×シーエーシー

東京情報大学の池田幸代准教授らによる「介護現場におけるロボット導入の効果と課題についての事例研究」で、感情認識AI「心sensor」が採用され、認知症高齢者の表情から感情を定量的に測定することで、コミュニケーションロボットの効果検証に成功しました。

介護施設において人手不足が深刻化する中、コミュニケーションロボットの活用が注目されています。東京情報大学の研究チームは、東京都荒川区の小規模多機能型居宅介護施設と連携し、特に「午後のお茶からお迎えまでの人手が薄くなる時間帯」に着目。認知症高齢者を含む利用者のQOL向上とスタッフの負担軽減を両立できるロボット運用方法を探りました。
使用されたのはコミュニケーションロボット「LOVOT」。本研究では、ロボット単独での効果だけでなく、スタッフや他利用者が関与する場合の効果の違いを明らかにすることを目指しました。
対象
心sensorによる感情測定
本研究では、利用者の感情変化を客観的に捉えるため、Affdex技術を搭載した心sensorを採用しました。心sensorは表情認識AI技術(FACS理論ベース)により、6つの基本感情(喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖、驚き)をリアルタイムで数値化します。
測定条件
活用された主要指標
定量分析:心sensorによる感情測定
心sensorの測定結果から、以下の知見が得られました。
特筆すべきは、ロボット単独では効果が限定的だった被験者でも、第三者が介在することで「喜び」が増幅された点です。心sensorは「ロボットを抱く瞬間」「スタッフがロボットに話しかける場面」で喜びのスコアが上昇するタイミングを正確に捉えました。
定性分析:スタッフの観察
スタッフ9名中7名が「ロボットありの方が利用者にポジティブな影響がある」と回答。具体的な観察例として、「普段笑わない方が笑顔を見せた」「可動域が狭い腕を伸ばしてロボットに触ろうとした」といった行動変化が報告されました。
運用面の課題
メリットとして健康増進への期待やサービス向上が挙げられた一方、デメリットとして重量・転倒リスク・充電の手間・利用者特性とのミスマッチが指摘されました。
学術的意義
本研究は、ロボット単体ではなく「第三者との三項関係的コミュニケーション」が感情的効果を高めることを実証しました。これは模倣理論(Dautenhahn & Billard)と整合し、介護ロボット導入において人的介入の重要性を裏付けています。
心sensor活用の実践的メリット
研究チームは、性格・ペット飼育歴・子育て経験などの個人要因とロボットとの関係性をさらに深く分析する必要性を指摘しています。心sensorのような客観的測定技術は、こうした個別最適化されたケアの実現において、不可欠なツールとなります。
介護現場におけるテクノロジー活用は、単なる省力化ではなく、利用者一人ひとりのQOL向上という本質的な目的に向かって進化しています。本研究は、感情測定技術がその実現にどう貢献できるかを示す重要な一歩となりました。
掲載論文
池田幸代・小早川睦貴・山口豊「介護現場におけるロボット導入の効果と課題についての事例研究 ─ 利用者のQOL向上を目指して ─」東京情報大学研究論集 Vol.29 No.2, 20
2026年05月27日